ゴーギャンってこんな人だったのか、と彼の芸域の広さとそれを可能にした技量を見せつけられた。これまで見てきた展覧会では、絵が主役で、彫刻や陶芸はオマケだった。それが、本展では陶芸家ゴーギャン、彫刻家ゴーギャンが、画家ゴーギャンと肩を並べている。作家ゴーギャン、版画家ゴーギャンもいる。シカゴ美術館とオルセーの共同企画は、彼の全貌を見せることに成功している。
木彫りにも、家具の装飾にも、陶器の壺にもゴーギャン・ワールドが全開している。「ル・コルビュジエの建築は、彼の絵を三次元化したもの」と、ル・コルビュジエ美術館で聞いたことがある。ゴーギャンにも同じことがいえる。ギリシャ神話の「レダと白鳥」をモチーフにした壺のモデルはタヒチの女だ。
見ものの一つは、本展で初めて再現されたという、マルキーズ諸島にあったゴーギャンの最後の住処だ。「享楽の家」と名付けられたこの家の入口には木彫りの装飾が施され、1対の彫刻が置かれている。ケ・ブランリー美術館で見たポリネシアについての展覧会を思い出す。彫刻は、タヒチの伝統的な彫刻様式にゴーギャンの視点が加わって、不思議なエネルギーを醸し出している。(羽)
1月22日まで